有機基含有メソポーラスマテリアルの合成と安定性、疎水性の評価
(東大工・横国大工)◯五十嵐 直子・辰巳 敬
Evaluation of the Stability of Synthesized Organo-Mesoporous MCM-41
Materials
(The University of
Tokyo; Yokohama National University) Igarashi, Naoko; Tatsumi, Takashi
1. 緒言
メソポーラスモレキュラシーブ MCM-41, MCM-48 はそれぞれ六方晶、立方晶構造を持ち、20〜100Åの均一な細孔を有するところから、新たな反応場を提供する触媒として期待されている。すでにMCM-41、-48のシラノール基をトリメチルシリル化することにより、疎水性の増加、構造の安定化が可能であることが報告されている1)。そこで触媒の疎水化の新たな手法としての有機基の直接導入が有効と考えられる。
本研究では、有機基を直接構造中に導入した MCM-41 の合成を試み、疎水性、安定性を調べた。
2. 実験
有機基導入メソポーラスモレキュラシーブは、Burkett等のフェニル基導入法2)を参考にオルトケイ酸エチル(TEOS) 80mol%に対し、メチルトリエトキシシラン(MTES)またはビニルトリエトキシシラン(VTES) 20mol%を有機基含有シリカ源として混合し、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドを型剤、水酸化ナトリウムをアルカリ源として、撹拌条件下で、室温、3日間の処理を行うことにより合成した。また、この標準法の他に、室温で2日間撹拌後に水熱合成を1日行ったもの(MCM-41-MTES-T)、室温で24時間撹拌後にpH10.2に酸調整したもの(MCM-41-A、MCM-41-MTES-A)、水熱合成および酸調整の処理を行ったもの(MCM-41-MTES-AT)、さらにMTES/TEOS比を40/60に増加させての合成(MCM-41-40MTES)を行った。生成物は濾過、洗浄、乾燥した後、型剤を除去するためにサンプルを塩酸とエタノールの溶液中還流下で80℃、16時間処理した。
キャラクタリゼーションとしては、XRD、NMR、窒素吸着、水吸着測定を行った。水に対する安定性を調べるため、酸処理したピュアシリカMCM-41と有機基含有MCM-41を、室温でNH4Cl飽和水溶液の水蒸気圧下、所定の日数放置後、XRD測定を行った。機械強度を観察するため、それぞれのサンプルに成型器で所定の圧力を5分間かけた後、XRD測定を行った。
3.
結果と考察
有機基導入MCM-41の合成
XRDによりヘキサゴナル構造の各種MCM-41-MTES、MCM-41-VTESの生成を確認した。有機基導入は、13C MAS NMRによって確認した。また、XRDから得た100面に由来するピーク強度比、窒素吸着による細孔径、29Si MAS NMRによって得た有機基導入量をTable 1に記す。有機基の導入により、細孔径の減少が観察された。
水に対する安定性
MCM-41、MCM-41-MTES、-VTES、の水蒸気処理を行ったところ、Fig. 1に示すようにMCM-41が1日間でメソ構造に起因するピークが減少したのに対し、有機基導入したサンプルでは構造の安定性がやや向上した。また、MTES/TEOS比を40/60に増加させたサンプルは、結晶性は低いながらも高い安定性を示した。さらに、水熱合成と酸調整両方を行ったサンプルでの大幅な水に対する安定性を確認した。これはシリカ種の縮合が促進されたためと考えられる。
機械的強度
圧縮による機械的強度を調べた結果をFig. 2にまとめた。MCM-41では、圧力をかけることによりXRDピーク強度が大きく減少しているのに対し、MCM-41-MTES、-VTESはMCM-41よりも緩やかに強度が減少していた。有機基の導入により機械強度が向上したことが示唆された。さらに、MCM-41-MTES-AT、MCM-41-40MTESの順でもっとも高い機械強度を得ることができた。
Table 1 Physical Data for Organically Functionalized MCM-41
Sample Peak
Intensity Pore* Organic
Gp.**
100 Reflection Size Content
(Å)
(Si mol%)
MCM-41 81 27.4 0
MCM-41-MTES 66 21.2 12.5
MCM-41-MTES-T 74 21.2 11.8
MCM-41-MTES-AT 100 21.2 16.1
MCM-41-40MTES 29 19.0 34.8
* : D-H Method ** : 29Si
MAS NMR
参考文献
1.
K. A. Koyano et al., J. Phys.
Chem., B, 101, 9436 (1997).
2.
S. L. Burkett et al., Chem,
Commun., (1996) 1367.